2015年3月3日火曜日

追悼

読者の方から「急逝した後藤騎手について、ひと言お願いします」というメッセージが届いた。とりとめのない文章になってしまうかもしれないけど、彼について書こうと思う。



陽気な男で、自ら命を絶つなんて信じがたい。本当の理由は後藤本人にしか分からないけど、もし悩みがあったとするなら体(首)の問題だと僕は思う。先週の土曜日(2月21日のダイヤモンドS)に落馬した時も、前をカットされたらされたで、昔の後藤だったらもっと早く反応してしっかり抑えが利いたはず。落ちるところまではいかなかったと思うんだ。それがワンテンポ遅れていた上に抑えも利かず、結果的に落馬してしまった。ケガをする前のように乗れていないことを、本人は感じていたんだろう。そうとしか考えられない。その次の日に京都で2つ勝っているから、周りは“大丈夫”って思うかもしれないけど、乗り役にしてみれば“勝てばいい”っていうものじゃない。乗り方や鞍の嵌り方、仕掛けのタイミングなど、色々な要素はあるにしても、“以前のように乗れなくなった”と自分自身が思ったら、たとえ結果が出ていたとしても悩んでしまうものなんだ。恐らく、そういう悩みを打ち明けられる人が周りにいなかったんじゃないかな。生真面目で一本気なところがあるヤツだから、余計にね。



人前では明るく振る舞って、すごく気配りのできる男。僕が主催するチャリティーコンペに、後藤は毎年必ず参加してくれた。アイツ、ゴルフが本当に下手で、「みんなと一緒に回りたくない」なんて言っていたのにね(笑)。それに、僕が現役を引退するちょっと前かな。ウチの息子が後藤のバレットを一時期やっていて、すごくかわいがってくれたんだよ。今、彼は大阪で違う仕事をしているんだけど、こないだ連絡をしたら「信じられない」って言っていた。まぁ、それは誰もが思うことなんだけどね…。本当にいい思い出しかないよ。



何はともあれ、残念としか言いようがない。現役の関東の乗り役の中では一番うまいと僕は思っていたからね。馬と馬の狭い間も平気で突っ込んでいく度胸があって、まさに“勝負師”と呼べる乗り役。しかも、競馬を広めることを常に考えていて、積極的に行動に移していた男だっただけに、競馬界にとっては大きな損失だと思う。これからもっともっと競馬に貢献して欲しかった。早過ぎるよね。



今はただ、彼の冥福を祈るだけだよ。




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