2017年5月1日月曜日

怖いぐらいに強かったキタサンブラック、外枠に泣いたサトノダイヤモンド【天皇賞・春回顧】

さっそく先週の競馬を振り返ろう。まずは日曜の天皇賞・春から。

キタサンブラックは、ちょっとこわいぐらいの強さだったね。大逃げを打ったヤマカツライデンから離れた2番手のポジションにいたから、実質的には平均ペースの単騎逃げ。(武)豊がズーッと正確なラップを刻み続けて、勝負どころでの動き出しも少し早すぎるくらいなんだけど、後続の脚を削るという観点から見れば仕掛けのタイミングはあんなもの。直線に入ったところで楽に後ろと距離を取って、そのまま差を詰めさせなかった。豊は相当自信を持っていたんだろう。でなければあれだけ強気な競馬はできないからね。もちろんそれは馬の実力があってのものだけど、このコンビは本当に手強い。盤石という雰囲気すらある。だいぶ先の話をすると、秋の凱旋門賞へ向けてすごく希望が持てる結果だった。タフな馬場は苦にしないタイプだし、折り合いも問題ない、先行して粘り強い、と考えていくと、悲願達成にこれほどピッタリくる馬は他にいないんじゃないかな。

シュヴァルグランは、負けたとはいえとてもいいレースをしたと思う。道中はキタサンブラックに離され過ぎない先団後ろのあたりにつけて、折り合いもまったく問題なし。早めに仕掛けたキタサンブラックに合わせて動いていったんだけど、そこで少し距離を取られたのが痛かった。やはりちょっとエンジンが重いところはあるんだろうね。それでも最後はこの馬なりにジリジリ伸びているし、持てる実力はすべて発揮している。今回は相手が悪かったけれど、今の状態ならどこかでGIを勝てるんじゃないかな。

サトノダイヤモンドは、やはり大外枠が痛かったね。ポジションはいつも通りの中団待機なんだけど、一度も内に入れるチャンスがなかった。終始ラチから遠いところを回らされれば、ロスが多いのはしょうがない。最後の直線で本来の決め手が発揮できなかったのはそのせいだろう。キタサンブラックに他の先行馬が絡んでいかなかったのも、この馬からすれば展開が向かなかった。それでも3着までは来ているのだからやはり力は抜けている。2強対決の勝敗にしてもまだ「向こうが上」と決まったわけじゃないと思うな。

アドマイヤデウスは、1週前追い切りからずっと評価していたんだけど、やはりしっかり走ってくれたね。今は体調が相当いいんだろう。また岩田も上手く乗ってるよ。1周目のホームストレッチでもうキタサンの真後ろのラチ沿いを確保して、勝負どころまで死んだようにじっと脚を溜める立ち回り。トビの大きい馬だから、ペースが流れたぶん内でも窮屈にならなかった点は良かったと思う。最後まで頑張ったんだけど、それでも伸び負けたのはさすがに力負け。とにかく最高の競馬ができたんじゃないかな。

アルバートは、いつもより積極的に出していって中団から。道中の折り合いは文句なかったんだけど、平均ペースで脚の溜まりどころがなかったぶん、ステイヤーながらキレ味タイプのこの馬には流れが向かなかったかもしれない。ただ、このメンバー相手に5着に入れば十分強いよ。今後も3000m以上のGII、GIIIならいつでも勝てそうだね。

ディーマジェスティは、いつもと同じ後ろからの競馬。勝負どころで外めから進出したんだけど、最後はいっぱいになってなだれ込むしかなかったね。前のブログで言ったように、この馬はそろそろ別の戦法を試してもいいと思うんだ。現状だと成績が頭打ちだし、実際に今回も見せ場がなかった。一回先行してみたりすれば馬がピリッとしてくると思うんだけどな…。

ゴールドアクターは、ゲートの中ですごくチャカチャカしていて、「危ないな」と思ったら案の定出遅れてしまった。差しの競馬をやって欲しいと思っていたから最悪ではないんだけど、それでもちょっと競馬に向かう気性ではなかったね。

シャケトラは、もう出遅れがすべて。ポジションを挽回しようと追っつけたところでかかってしまって、スムーズさを欠いたのが敗因。長距離戦で序盤にあれをやってしまうとかなりキツいよね。まあまだ先のある馬だし、2400mあたりのほうが競馬はしやすいだろうから見限る必要は全然ないでしょう。


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