2015年9月23日水曜日

伸二の引退はまだ早いと思うし、本当に残念

今日は久しぶりに読者の方からいただいた質問にお答えしよう。

今回取り上げる質問は、
「藤田騎手が引退を表明されました。坂井さんの著書でも対談されているほどの仲と存じています。坂井さんの藤田騎手との思い出、今後について一言お聞かせいただければと思いコメントさせていただきました」
というもの。

突然の発表だったから、ファンの皆さんと同じく僕も驚いたよ。まぁ、マイペースで一匹狼タイプの伸二らしいといえばらしいんだけど…。フェアプレー賞を何度も受賞しているだけあって、癖馬でも上手に乗りこなす技術を持っていたから、引退はまだ早いと思う。目方(体重)が重くて減量に苦労するっていうタイプでもなかっただけに余計にね。

伸二は僕のことを“オヤジ”と呼んで慕ってくれた。右を叩けば左に、左に叩けば右に飛んで行くくらい癖のある馬だったミヤビリージェントは、僕が少しずつ矯正していったんだけど、関西のレースを使う時(2001年のアーリントンカップ)に「誰を乗せたらいい?」って調教師に聞かれたんだ。それで僕は「伸二なら乗れるよ」って即答した。その時は結果が出なかったけど、その年の暮れの中山(香取特別)でちゃんと勝っているからね。それだけの技術を持った乗り役だったよ。この辺の話は、僕と伸二の対談という形で、以前僕が書いた「コースの達人」っていう本に載っている。機会があったら手に取って欲しいね。

ただ、エージェント制の割を食う形で最近は騎乗馬に恵まれていなかったからね。「この馬で来年のダービーを獲る!」って思えるような2歳馬に毎年巡り合っていれば違ったのかもしれないけど、そういう馬も回ってこなくて乗り役としてのモチベーションが保てなかったんだと思う。

それに、最近の競馬界はスポーツとして見せるような風潮があるけど、伸二の場合は競馬=勝負っていう昔気質のタイプだから、そういうのも相容れなかったんじゃないかな。

他の乗り役や採決に対して、時として口うるさく言うようなタイプではあったけど、人の命が懸かっているんだからむしろ当然のことだと僕は思う。そういう意味でも、伸二が競馬界から去ってしまったことが残念でならない。

今後はメディアを通じて競馬の楽しさ、素晴らしさを伝えていってくれれば…と思う。長い間、本当にお疲れ様でした。


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