2015年10月29日木曜日

埼玉新聞栄冠賞を振り返る

レースは出ムチを入れてハナへ行こうとするハーキュリーズやラッキープリンスを制して大外枠から内に切れ込み気味に入って来たタイムズアローがハナを主張、タイムズアローがハナへ行く際に前をカットされて気分を害したのか行きたがる素振りを見せたラッキープリンスをヤネが手綱を引き必死に宥めて2番手からの競馬、出ムチが入りすっかり行く気になってしまったハーキュリーズが折り合いを欠き気味にインの3番手をキープ、その直後の4番手にカキツバタロイヤルがつけ、それから1馬身ほど離れたインコースをガンマーバーストが進み、ガンバーバーストの外を半馬身ほど遅れて羽田盃ストゥディウムが追走する。
タイムズアローは単騎で行けると云う思いの外楽な展開となった印象で、300M過ぎからペースを落として13秒8-13秒3-13秒4-13秒0と13秒台のラップを連発するマイペースでの逃げで息を入れて、向う正面に入ると徐々にペースを上げて後続を突き放して逃げ切りを図る。
そのタイムズアローに2番手のラッキープリンスが追い縋ろうとするも3角手前で早くも脚色に余裕が無く、それに代わって2番手には大外を強引にマクって来たアールデュランが進出したが前を行くタイムズアローに並び掛ける事は叶わず、直線入り口で後続とのリードを2~3馬身まで広げたタイムズアローの逃げ切り濃厚と思ったが、直線半ばでタイムズアローの脚色が急激に鈍り出すと2番手以下の面々がドッと押し寄せてゴール前では横一列の叩き合いとなり、直線で進路を外へと持ち出したカキツバタロイヤルが各馬をまとめて差し切って優勝、ゴール前でガッツホーズを出した中野省吾騎手は嬉しい初重賞制覇。

勝ったカキツバタロイヤルは4~5番手の好位のポジションからピタリと折り合ってレースを進め、向う正面に入るとヤネが追い出しを開始、直線で外へと持ち出すと一気に伸びてゴール前の5~6頭一団となっての激しい叩き合いから抜け出して2着のガンマーバーストを半馬身抑えて12年の川崎マイラーズ以来実に3年4ヶ月ぶりとなる勝利を挙げた。
勝負ドコの3~4角では前が壁になった部分はあるが相変わらず反応がイマイチで前との差を詰める事が出来なかったが、ここでヤネが無理せず終いの脚に賭け、馬込みを巧く捌いて外へと持ち出すと直線で百戦錬磨の古豪の意地を見せてキッチリと伸びて他馬を差し切る。
440Kの前後のガサの無い馬だがカンカン泣きはしないし、折り合いに不安が無く馬込みの中で競馬が出来る事が強みで、9歳馬と云えども元気一杯で面子次第では今後もタイトルを増やす事は可能だろう。


2着のガンマーバーストはゆるい流れになり時折行きたがる仕草を見せたがヤネが宥めながら中団のインから追走、巧く流れに乗りながら道中ジックリと脚をタメる事が出来た印象で、直線ではインから馬込みを捌いて馬場の真ん中へと進路を取り、ゴール前で馬群を割ってジワジワと伸びて抜け出すと外から伸びたカキツバタロイヤルとの競り合いに持ち込んだが、叩き合いの結果半馬身及ばずの2着惜敗。
近3走は案外の結果しか残しておらず7番人気と評価は低かったが、6回船橋・短夜賞でタイムズアローとコンマ1秒差の2着の成績から見限れない印象があったのは事実で、今回の2着と云う結果から考えると今のガンマーバーストにはマイル戦は忙しく、前走の東京記念の2400は距離が長過ぎると考えるべきかも知れないが、夏場の成績から暑さに弱い体質の可能性もあり、涼しくなりようやく体調が上向いた事が今回の好走に繋がった印象もある。

3着のタイムズアローは大外枠からやや強引にハナへ行った事で不利を被った他馬が折り合いを欠き、結果的に2~3番手が道中折り合いに専念した事で絡んでくる馬が不在となり図らずも楽逃げを打つ事に成功、道中は終始主導権を握って巧みなペース配分で後続を翻弄し、手綱を持ったままリードを広げて直線に入り勝利をほぼ手中に収めながら、早目に抜け出した事でソラを使ったのか直線半ばで急激に失速すると後続に一気に差を詰められて馬群に呑み込まれる、今回は課題だった直線で手前を替える事を何とか出来た事でゴール前で再度脚を使って盛り返したが3着に食い込むのが精一杯だった。
中央時代に先行した事があってもハナへ行った事の無いタイムズアローが逃げたのは直線で手前を替えず詰めが甘くなる部分をカバーする為だと思われるが、今回はこれまでと異なり直線で何とか手前を替えたのだが、今度はソラを使い直線半ばで自滅気味に失速するなど悪癖が多くて中々乗りこなすのが難しいタイプ、これだけクリアすべき課題があっては勝ち切れないケースが今後も続くのは確実と思え、能力が高いのは認めても絶対的な信頼が置けない印象が強い馬。

4着のハーキュリーズはスタートで出ムチを入れハナへ行く気満々だったが、大外からタイムズアローがやや強引にハナを主張した事でヤネが競り合いを避けて控える競馬をチョイスしたが、馬の方は行く気が治まらずカカってしまい、インの3番手からヤネが折り合いに専念し追走した事が結果的にタイムズアローの単騎逃げを許した要因となる。
その後、何とか折り合って3角手前で徐々にポジションを上げてタイムズアローへの追撃を開始したが差を詰めるどころか直線入り口では逆に差が広がってしまい、ここで万事休すと思いきや、ソラを使ったタイムズアローが失速した事で一旦は先頭を窺うシーンを作る健闘も、前半折り合いを欠いていただけに最後は力尽きて4着に沈む。
ダートの経験が少なく手探り状態だった転入初戦だが、結果折り合いを欠いて4着と敗れたが今回のレース振りからダートに関して特に問題は感じず、今後に向けて目処がついた1戦と言えるだろう。

5着のアールデュランはスタートで常に置かれる馬だが、今回で3回目の騎乗となる見澤騎手が出ムチを入れて中団のポジションをキープしながら追走し、3角手前で大外を通って一気にマクって2番手までポジションを上げて直線を迎える大健闘も、ゴール前の一団となっての叩き合いの場面になると脚色に余裕が無くなってしまい5着に敗れる。

軸に抜擢したバトードールは一向に前に進む気配を感じず、ヤネが早々と諦めて後方のインからの競馬をチョイス、直線でもインを通り一瞬だけ伸びかけたが、最後は止まってしまい7着と云う結果。
ヤネとしては極力ロスの無い競馬を心掛けてインを通ったのだろうが、この馬の脚質を考えればインに拘らず外を通ってマクる競馬をした方が良かったと云う印象があるのは確か。

羽田盃馬ストゥディウムはスタート直後にやや行きたがる素振りを見せたが、ヤネが巧く宥めると小回りの浦和コースを意識したのか中団からの追走と普段よりも前目のポジションでの競馬を試みたが、道中でアールデュランに外からフタをされるなど中々楽な競馬はさせて貰えない印象、ようやく向う正面中程でヤネがゴーサインを出してポジションを上げようとしたが、羽田盃で見せた鬼脚が嘘の様に最後までジリジリとした脚しか使えず、前とのまったく差を詰める事が出来ず8着惨敗。
ただ、今回や前走のように中途半端に動くと持ち味が活きないタイプだけに戦前に指摘したようにこの馬に小回りで直線の短いコーナー6回の浦和1900Mは明らかに不向きで、この結果はある意味納得出来る。

東京ダービー馬ラッキープリンスは初の古馬相手の重賞だが今回は古馬と同じ斤量58を背負わされての競馬と条件が厳しかった事のは事実だが、気難しい部分があるだけにスタート直後にタイムズアローにハナ先をコスられた事が結果的に致命傷、道中折り合いを欠いて終始自分のリズムで競馬が出来ず、3角で早々と失速し9着と惨敗。

決してカキツバタロイヤルの勝利にケチをつける気は無いが、今回の埼玉新聞栄冠賞はタイムズアローがやや強引にハナを主張した事で他馬に不利を与えた上、直線で勝手に自滅して3着に敗れるなど、この馬に一頭に引っ掻き回されただけの重賞だった印象がある。


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