レースは今回中央時代の主戦の幸騎手を起用したブルーチッパーがスタートから押して前走のレディスプレリュード同様にハナへ行く。
2番手のインにカチューシャ、そこから半馬身差の3番手の外にキャニオンバレーがつけ、その直後の4~5番手は内にサンビスタと外にアムールブリエと内外に分かれて併走、そこから2馬身ほど離れたインには前走のレディスプレリュードでは2番手から競馬をしたホワイトフーガがつけ、外からジワジワとポジションを上げて来たトロワボヌールと併走しながら進み、向う正面で気がつけば逃げるブルーチッパーを除けば今回出走の中央勢6頭全てが好位のポジションを占めていた。
前走でホワイトフーガに終始マークされ厳しい競馬を強いられたブルーチッパーだが、今回はホワイトフーガが控えた事もあり絡んで来る馬が不在で願ってもない単騎逃げに持ち込んだが、スタートから12秒2-11秒6-12秒0-11秒8-11秒8と1000M通過59秒4と不良馬場と云う事を差っ引いてもかなり早いラップを刻んでの逃げ、そのため先行していたカチューシャ・キャニオンバレーは3角過ぎに脚色に余裕が無くなり後退し、それらに代わってアムールブリエが外から押して2番手まで進出、その他の中央勢も徐々にポジションを押し上げ直線へと入る。
後続を1馬身ほど引き離して直線に入ったブルーチッパーだが後続集団がドッと押し寄せるとアッと言う間に馬群に呑み込まれて万事休す、直線での叩き合いを制して1番人気のサンビスタが抜け出そうとしたトコを直線まで追い出しをジッとガマンしていたホワイトフーガが内をすくって並び掛けると、残り200の標識手前でサンビスタを一気に突き放してGⅠ制覇に成功した。
勝ったホワイトフーガは前2走の2~3番手から先行し4角先頭の競馬と全く異なる中団のインから控える競馬を選択したが、これまで5月の京都・端午Sなどで控えて差す競馬で勝利しており、その際馬込みの中での普通に競馬をしていた事から今回の戦法に特に問題は無いはず。
事実、中団のインからスンナリ追走すると道中はピタリと折り合いジッとガマンを決め込み、直線で満を持して追い出すと内の狭いスペースを抉じ開けるようにして抜け出して、昨年のレディスクラシックの覇者サンビスタに5馬身差をつけて圧勝し新女王へと名乗りを上げた。
確かにこの日の大井の馬場はイン有利の傾向が強かっただけに3番ゲートを引き当てた運の強さを活かして内枠からロスの無い競馬が出来た事、単騎逃げに持ち込んだブルーチッパーが思いの外早いラップを刻んで行く展開に恵まれた事、3歳馬だけに古馬連中から斤量2K貰いで競馬出来た事など諸々の条件が上手く噛み合って勝利への追い風になった印象も、その条件に応えて勝利するだけの高い能力をホワイトフーガが有していたからこそ成し得た勝利だったのは間違いない。
また、今回は控える競馬で1800Mの距離を克服したのは今後に向けて大きな収穫だが、同時にGⅠレースを勝利した事で今後は牝馬限定の重賞では他馬より斤量を背負わされるケースが増えるだけに、斤量差に対応して勝利する事がこれからのホワイトフーガの課題となる。
2着のサンビスタは先行グループを見据えて4~5番手のポジションをインから進み、3~4角でジワリとポジションを上げ直線で先頭を行くブルーチッパーに並び掛ける1番人気に相応しい正攻法の競馬を試みて一旦は先頭に立つシーンがあったのだが、ホワイトフーガに内をすくわれ並び掛けられるとその後はアッサリと突き放されてしまい、何とか2着を確保するも勝ったホワイトフーガから5馬身差の完敗に終わる。
サンビスタが先行勢を見据えて4~5番手のポジションから競馬をしたのは決して間違っていないが、しかしハナへ行ったブルーチッパーが思いの外早いラップを刻んで逃げたのは想定外だったはずで、ハイペースを好位から追いかけたサンビスタは早目に動いた事で終いの脚が鈍ってしまった印象も、ダントツ人気を背負っている事から直線で早目に動きブルーチッパーを捕えに行った事も仕方ないだろう。
今回の5馬身差は早い流れを4~5番手から追走しチャンピオンに相応しい正攻法の競馬をしたサンビスタと直線まで追い出しをガマンするチャレンジャーに相応しい一発狙いの騎乗をしたホワイトフーガの其々の立場の違いが如実に現れた結果で、現実に今回のレディスクラシックの勝ち時計は馬場が違えどステップレースのレディスプレリュードの勝ち時計より時計ひとつ半近くも遅いモノだけにこの5馬身差が現在のこの2頭の実力差とストレートに判断するべきではない。
3着のトロワボヌールはホワイトフーガと違いイン有利な今回の馬場で大外枠を引き当てる運の無さ、しかもスタート直後にバランスを崩してしまいレースの流れに乗り損なった事が最後まで影響した印象。
道中で外外を回って何とかポジションを挽回し、直線入り口では先団に取り付く事が出来たのだが、そこまで脚を使った分だけ直線ではジリジリとしか伸びず、前を行く2頭との差は広がるばかりでアムールブリエをゴール前で交わして3番手まで上がるのが精一杯だった。
4着のアムールブリエがスタート直後に隣のアクティフに寄られる不利があったが、ヤネが必死に押してサンビスタの外の5番手までポジションを挽回すると、リードを広げて逃げるブルーチッパーとの差を詰めるべく3角手前で仕掛けて外を通って2番手まで上がり直線へと入るが、内が伸びる馬場で外外を無理に通って来たツケが出るのは当然の話で、直線でヤネがステッキを入れて追い出すも明らかに脚色に余裕はなく先頭に立つどころかホワイトフーガ・サンビスタとの差が徐々に広がり出して、ゴール前でトロワボヌールにも交わされて4着に沈む。
前走のレディスプレリュードでサンビスタに完敗している事から、今回は早目に動いて押し切ろうとしたのだろうが、早いラップを刻んで逃げるブルーチッパーを3角で捕まえに行くのは少々無茶だし、今回の馬場傾向から外外を強引に回る大味な競馬をしては勝ち負け出来る訳が無い、自分のリズムで走れないまま不完全燃焼でレースを終えた。
5着のチュウグウノツカイは好発も手綱を抑えて中団よりやや後ろのポジションから追走、道中は無理する事無く自分のペースでレースを進めて直線では外へと持ち出してジワジワと脚を伸ばし、ゴール寸前でバテたノットオーソリティを何とかクビ捕えて掲示板を確保し地方所属馬としては最先着を果たしたが、着拾いの競馬がハマっただけで勝ち負けとは程遠く評価の対象外だろう。
戦前にホワイトフーガは乗り方ひとつでトロワボヌールとの逆転は可能と書いたが、まさかサンビスタと逆転する事が出来るとはなぁ・・・
正直、自信があり裏目を買う必要はないと思っていただけに後悔はしないが、JBCの初っ端のレースで裏目を食って負けた事からその後の2つのレースに関して嫌な予感がしたのは確か。
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