2016年5月29日日曜日

日本ダービー 2016 レース回顧:マカヒキと川田将雅、直線馬群を捌き切って悲願のダービー制覇!

チェックメイト:安田記念728-90

2016 日本ダービー(GI) 東京芝2400m良
結果・回顧

2:24.0 12.6 - 11.1 - 11.9 - 12.1 - 12.3 - 12.9 - 13.1 - 11.8 - 12.0 - 11.6 - 11.0 - 11.6
60.0-58.0SS


 1000通過が60秒フラット、そこそこ流れたと見せかけてかなりの高速馬場状態と中だるみによって後半が58.0と前後半で見れば2秒のスロー。ちょうど中盤の2Fが12.9-13.1とハロン13とかなり落ち込んでいるので、実質的にはかなりのスローになっていた。時計が2:24.0と遅いのも納得だし、後半5Fの58.0はかなり速く、昨年は2:23.2と超高速決着だったが後半1000は59.4だから1.4も速い。スローからの2段階加速で、L2で強烈なトップスピードを要求されたという競馬だ。2段階目の仕掛けが遅かったわけなので、直線でのギアチェンジが要求されている度合いが強い。このペースを楽に進めつつそこからしっかりとギアを引き上げられたかどうかが勝敗に直結したかなと感じる。時計は思っていたより遅かったが、遅くなるだけの状況になっているし、その分後半5Fが相当速いので個人的には前評判通りかなりのハイレベル戦だったと見ていいと思う。非常に良いレースだったと。


 1着マカヒキは3番枠からまずまずのスタートを切ってそれを活かして下げすぎずにしっかりと中団の内目に入り込む形。道中はエアメサイアを目標にするような感じ、しっかりと折り合いながら前にスペースを置いて動くイメージを持ちながらでアジュールローズを直後に置く形で3角。3角手前の中だるみでも動かずに3角でエアスピネルが動いたところでその直後をとって内目から少し外に上手く誘導しながら中団で直線。序盤ではまだ狭かったが上り坂で進路確保しながらしっかりと間を割るとすっと反応、L1でそこから抜けだしてサトノとの大接戦を制してダービー馬となった。川田が完璧と言っていい騎乗でダービーをしっかりと取り切った。とにかく最序盤のゲート、そして馬を信頼して下げすぎなかったことが大きいと思う。恐らく隊列だけ見たら結構流れているかなと判断したいところだが実際はスローの中で道中も動くイメージを持っていた。ポジションを取ってかつ動くイメージを持てていたこと。エアスピネルを追いかけるイメージをもっていたことで前に壁はあったが直線に入るまでにある程度加速しながら進められたと思う。前がある程度までは伸びてくれると信頼できたエアスピネルだったし、それを早い段階で選んでいたというのが良かった。それと馬もやっぱり上り坂であの感じでも置かれずにむしろ伸びてきているぐらいだったから、上り坂で加速するのが得意なんだろうと思う。それと皐月賞とダービーでは要所の反応が逆になっているように、多分この馬はコーナーで加速することをあまり得意としていない気がする。弥生賞みたいに前も仕掛けを待っていて後ろから動く馬もそんなにいないと相対的に動けているように見えたけど、やっぱりこの馬は直線の加速地点でしっかりと伸びきれているからね。ディーマジェスティと比較するとその辺が今回は勝敗の鍵を握ったかなと思う。直線だったらこれぐらいの器用さは見せているから、その点でも東京向きだったと見て良いんじゃないかな。まあ今年のクラシックの総評というか、このダービーのマカヒキ本命はこのクラシックを総括した結果なんだけど、とにかく本当に難しい世代だった。例年なら通用しそうな馬が通用しないから予想もかなり難しかったし、今回のダービーにしてもサトノダイヤモンド、ディーマジェスティ、リオンディーズはいずれも高いレベルで底を見せていない馬だった。特にサトノダイヤモンドに関しては持っている総合的なものでは最上位かなと思っていて、この2頭の評価は本当に悩まされた。その中でディーマジェスティの皐月賞のパフォーマンス。これも悩まされた。ダービーでここまで穴を狙えないなと思った年は過去に例がないほどで、真打ちが後から後から出てくるという稀有な年だったと見ていいと思う。分析家としては大変な年だったと思うが、最後の最後にダービー馬に本命を打てたのは良かった。そして川田を信じて、川田がその期待以上の競馬をしてくれたこと。これも素直に嬉しいし、おめでとうよりもありがとうの一言のほうが強い。サトノが世代最強レベルのパフォーマンスを見せた中で一つでも間違っていたらまず勝ちはなかった。川田の騎乗を賞賛せずにこのダービーを振り返ることはできんでしょう。素晴らしい騎乗でした。馬券的には面白く無い結果になったけど、競馬としてみた時にこのダービーは1年後に伝説になっているかもしれんね。素晴らしいレース、そして素晴らしい騎乗、そしてマカヒキの素晴らしいパフォーマンスでした。


 2着サトノダイヤモンドは8番枠から好発、そこからどうするかなと見ていたがルメールがしっかりと下げずに流れに乗せていく形を選択して中団、マカヒキとちょうど同じような列で進めていく。道中も前がある程度離して進める中で60秒通過、その中で中団の外目でしっかりと折り合って進めて3角に入る。3角でエアスピネルを目標にしながらその外からじわっと追走、4角でもマカヒキを出さない感じで蓋をしながら直線に入る。序盤で好位列から追い出されてエアスピネルを目標に伸びてくる、L2の坂の地点でもしっかりと加速するが間を割ってきた川田マカヒキにグンと伸びられ前に出られる。それでも最後まで食らいついて大接戦に持ち込む盛り返しを見せるも際どく届かず2着までだった。これはルメールマジでごめんなさいレベルで素晴らしい騎乗だったと思う。これに関しては川田が非常に高いレベルで神騎乗だったと思うし、ルメールにしてもサトノを信じて一番強いという乗り方をしてくれたし、かつ最大のライバルといってよかったマカヒキをもちろん合法的に閉めてと完璧な流れだったと思う。これで負けてしまう辺りがルメールといえばルメールなのかもしれないけど…ただ勝つために最高の競馬をしてくれたと思う。正直スローからの2段階加速でもL2最速11.0、この流れでしっかりと鋭く脚を使ってきたのは驚きだし、この競馬でマカヒキが完璧に近い競馬をしての接戦ということを考えるとこれは相当な器だと言わざるを得んよね。本当に相当強い競馬をしているんですよ。ダービー向きじゃないとか言ったけど、そういうレベルじゃないよねと。本当に先が楽しみな世代で、少なくとも総合的に見れば世代最強でも驚け無い。ただ器用さという点ではディーマジェスティよりは上でもマカヒキに狭いところでぐんと来られているし、ある程度流れた中では不利があったにせよ皐月賞で少なくともディーマジェスティには完敗…。そういったところを考えると勝ち切るには何かしらのアイデアは必要かもしれんね。スローロンスパの形でも最後まで足を使えているし、恐らく菊花賞も全く問題ないと思う。むしろこのレースでステイヤー色が強い印象も植えつけたし、本当に変幻自在すぎて分析家泣かせというしか無いな…本当にこちらの想像の範囲を軽々と超えてくるんだから、脱帽するしか無い。今回も2着だけど、ここまでマカヒキに対して互角以上なんじゃないか?と思わせるほどの競馬をこの展開でしてくるとは思わなかったよ。本当にすごい馬、サトノクラウンも好きな馬だけど、サトノダイヤモンドがサトノ最強は間違いないかな。結局この世代はマカヒキ、ディー、サトノの3強だったと見るべきだと思う。


 3着ディーマジェスティはこちら


 4着エアスピネルは5番枠からまずまずのスタートから武豊がどうするかなと見ていたんだが思った以上に積極的に好位を狙いに行って勝負を賭ける3列目に入り込む。道中も前がスローながら単騎で進めていく形の中でこの馬も単独の5番手でレースを進めていく。3角の緩みの中で前にいたプロディガルサンとともにじわっととりつきながら差を詰めて3角。3~4角で前のプロディガルサンを目標に中目から進め、4角でムチが入って直線。序盤で2列目にすぐに並びかけL2の最速地点で一旦は先頭に立つ。しかしL1でちょっと甘くなってしまって最後はマカヒキら3強相手に下がっての4着と屈した。ただ、これは本当に武豊の好調ぶりを見せつける競馬だったなと思う。エアスピネルで勝つならペースが速いようで遅め、そして仕掛けのタイミングをこちらで主導しつつあるかどうかはわからない坂加速のギアチェンジの性能に賭けるしかない、というまんまのことをやってのけてくれた。それに馬も応えてL2の段階でいい足を使って伸びてきた。出し抜こうとしていたしこれは本当に最高の競馬だった。それでも最後は甘くなってしまうぐらい今年のレベルが高すぎた…というしか無いのかなと。ただ、これでこの馬はすべての後半の要素をバランスよく見せてくれたわけで、基礎スピードの幅も皐月賞で見せているように、明確な弱点が全く無い馬になったといえる。府中でパフォーマンスを上げてきている感もあるしね。ただ流石にどういう競馬になっても世代的に最上位にというのはちょっと難しいね。秋の天皇賞を目指すか、マイル路線に進むか…。この世代では素材的に底は見せてしまっているので、あとはこの馬にとってのベストがどこかというのと相手関係との比較からレースを選択して行きたいかな。


 5着リオンディーズは12番枠からややで負け、そこからは折り合いに徹しながら進むがやはり終始首を上げていて掛かって進めてしまう。3角でもレッドエルディスト辺りよりも後ろで後方で進めながら4角出口では実質最後方で進めて直線。序盤で馬群の中に入り込んで一瞬は伸び、L2の坂の地点でも差を詰めてくるのだがL1で甘くなってしまって下がってくるエアスピネルを捕らえるレベルの脚も維持できずの5着完敗だった。まあ、言いたいことは山ほどある。折り合いをこなせというのは難しいにせよやはり掛かってしまってそれを意識しすぎたことでミルコ最大の武器であるレースの流れの読みは完全に鳴りを潜めてしまっていた。もちろんこの馬自身トップスピードの質は高いレベルにあるし、実際直線半ばまでは掛かりながらも伸びてきていた。これは掛かっていたというよりペース自体がゆったりだったので脚自体は引き出せたというところだろう。実際上がりは最速である。明確に詰めていたのがL3-2の地点なので少なくとも後半要素で負けているわけではない。掛かっていたから脚が削がれたとは思わない。むしろ折り合いを意識しすぎたことで必要以上に後ろに下げ過ぎたことが最大の敗因だろうと。まあこれは馬券を買う前の段階である程度想定していて、やっぱり折り合いを気にしすぎて人馬の持ち味を削ぐ形にならないかというのはあった。ただ、それでも終わってみれば2秒のスロー、中団にいた馬が脚を出しきって33秒前半の競馬になった段階で勝敗は決していた。これはリオンディーズが掛かる掛からない以前である。これだけのハイレベル戦になると一つ間違えるとこうなるし、皐月賞で勝負に行った事自体は結果論だと思っているが、ダービーの敗戦は完全に皐月賞のギャンブルがここまで裏目になってしまったというしか無いなと。ダービーに関してはミルコのミスというしか無い。もちろん前につけて折り合っていたかどうか、暴走して大敗したリスクもあるが、あの位置で進めていては勝負にならない以上、勝負に行くなら緩い前半でというのはミルコの十八番だったはず。それをできなくさせたのが皐月賞であり、結果としてダービーの敗因はあの皐月賞だったと言っていいと思うね。ギャンブルに出ると尾を引くことも多いんだけど、常にギャンブルだと思って強気の競馬をすべき馬はしないとダメだよね。最速の上がりは出せたし例年ならこれでもある程度やれちゃったんだろうけど、3頭の怪物候補が各々良い競馬をしてくるとどうにもならない。もちろん仕方ない面もあるが、厳しく言えばミルコが超消極的になったことが敗因としては全てといっていいと思う。少なくとも勝負の舞台に建てない位置にいた。ニュートラルなミルコなら向こう正面の段階でもうちょっと手を売っていたはずだし、そもそももうちょっと前にいたと思う。それをさせなかった皐月賞の負け方とこの馬の前向きすぎる気性というところ。上位との明暗を分けたが、ミルコにはこれを真摯に反省してもらって、怖さを覚えつつもバランスを取ってこれからも胆力を活かす競馬を目指してほしいね。ダービーに関してはルメールとは天と地ほどの差がある内容となった。


 6着スマートオーディンは10番枠から五分には出てそこから無理をせずに下げて中団馬群の中に入り込む。道中でそこからも少し下げつつディーマジェスティをマークするような形で進めていく。3~4角でも中団馬群の真ん中で我慢しながら外目を追走、ただお仕上げきれずに後方で直線。序盤でディーマジェスティの直後を取るのだがディーのほうが反応が悪くて抜け出すのに少し時間がかかる。そこから外に出して一瞬は伸びかけるが一瞬だけ、L1は甘くなった。まあこれは納得の負け方というか、やっぱりこのクラスまで来るとトップスピードの持続力が物足りないんだよなあと。どスローで各場の仕掛けが遅れれば別だが、後ろからではこうなる。その上でやっぱりあの位置でディーマジェスティの加速を後ろで待っているようでは…ってところなんだよなあ。瞬時に点火してグンと抜け出しちゃわないと駄目だし、ディーマジェスティがじわじわと加速するのに合わせてこちらもじわじわと加速して馬のケツをおっかけるいつもの戸崎の負けパターンなんだよなあ。まあ今回はポジションも悪かったし、3~4角での進路取りでどうしようもなくなったから仕方なくディーマジェスティの直後を狙ったらディーの加速が思ったよりも悪くて我慢をさせられた感じではあるから仕方ない面もあるが、それでも結局最序盤リスクを取れなかったところではあるかな。そりゃ理で考えればやっぱり無理はしたくないけど、でもできる範囲で無理をしないと、他がそうしてくると一瞬の切れ味だけではどうにもならんからね。まあ逆に言えばやっぱり適性的には特化してきている馬なので、噛み合った時の破壊力に賭けるしか無いといえば無いんだけどね。総合力が非常に高い3頭がいるわけなので、この世代ではなかなか正攻法では難しいというのもある。我慢してこの一瞬の切れ味をどう爆発させるか。府中で得意の展開を待って…というところかな。


 7着マウントロブソンは9番枠から出遅れて最後方近くからの競馬になる。道中も折り合っては進めていたが、リカバーできるポイントもなく最後方で進めながら3角に入る。3~4角でも最内で手を動かしながら追走し、前のスペースをつきながら直線序盤でジリジリ差を詰め、L2の坂ではまだ中団ぐらい。L1までしぶとく足を使ってはいたが決定的なバテ差しを見せられずの7着完敗だった。まあ出遅れが響いたのは仕方ないし、この展開でとなるとちょっと難しかったかな。もうちょっと仕掛けが早くなればコーナーで内々を通したこともプラスになったかなとも思うんだが、2段階加速でも結局直線まで上がりきらなかったしね。個人的にはポテンシャル面で面白いものを秘めていると思うので、ステイヤー路線で楽しめるかもしれない。いずれにせよ菊花賞戦線で注目したい一頭かな。


 9着レッドエルディストは13番枠から出負けして最後方近くまで下げてレースを進めていく。道中も後方で無理をせずに動かず3角。3~4角で大外からぶん回しつつ押し上げて直線に入る四位競馬。その分序盤でそれなりに伸びかけたがL2の上り坂地点でやや伸び切れずに削がれている感じ、L1でも伸びはなく雪崩れ込むだけの9着完敗だった。ん~まあ結局は力の差というのもあったとは思う。青葉賞はかなりのロンスパになったし3~4角はかなり上手く立ちまわっていたからね。ただ、今回はトップスピード戦、後半1000が58秒の中であれだけ外を回すとロスが小さいわけもなかったし、L2の坂の地点での伸びあぐねもあったが流石に仕掛けが早かったことが影響している気がする。この馬の場合はトップスピードを要求されるよりもロンスパになってポテンシャルで勝負するほうが良いだろうね。ここまで速い上がりを要求されると質的に苦労した感じ。そういうタイプなので距離を延ばして長く脚を使うイメージでロンスパに仕掛けていく競馬を狙ってほしいね。


 13着ヴァンキッシュランは14番枠からややで負けというぐらい、そこから無理せずに中団外につけていくという競馬。道中はサトノダイヤモンドを外からマークするような形で進めて勝負を意識できる競馬で3角に入る。3~4角で外目からサトノの仕掛けに合わせる形で仕掛けて直線。序盤で外目から追い出されるがイマイチ反応できずにふらふら。L2の上り坂地点で明らかに置かれてしまってそこからは伸びもなく沈んで完敗に終わった。う~ん…という感じ。まあ敗因としてこれというのは難しいけど、今回一応L2最速は明確で、ここでの加速で置かれている形なのは間違いない。パトロールを見ても特段失速する原因はない。外から前を向いて流れに沿って競馬ができていたし、ここまで崩れるのはちょっと読めないけど、これまでの青葉賞も仕掛けが速い競馬だったし、レーヴァテインに先着降着した500万下の時もL3の段階でも速いラップを踏んでいてほぼトップスピードに入っていたから、意外と坂加速がダメだったかもしれん。それでもちょっと負け過ぎなんだよなあ。悪くない競馬をしていたし、この展開で皐月賞組との差はともかくとしてもレッドエルディストに先着されるような馬ではないと思っていたんだが。もしかしたら2秒のスローでも意外とこれについていって脚を引き出す余裕がなかったのかも…。青葉賞も入りはドスローだったからね…。基礎スピードの幅がかなり狭い可能性も考えておきたい。レーヴミストラルもそうだが青葉賞馬は結構このパターンが多いからね。注意したい。


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