今回は番外編。読者の方から、レイデオロの追い切り診断について何件か質問があったので、それに対する解答をさせてもらおう。
日本ダービーの追い切り診断で、僕はレイデオロについて以下のように書いた。
『レイデオロは、脚の伸び方がイマイチだし、先週と同じで動きに硬さが残っている点は気がかり。ルメールが直線でちょっとクビを押したところで体の使いは良くなったけど、万全の状態ではないかもしれないな…』
結果としてはこの見解は的を得ていなくて、見事日本ダービー優勝ということになったのは周知の通り。これは僕としても反省すべき点で、もしブログを読んでレイデオロの評価を下げた方がいたとしたら本当に申し訳ない。
言い訳をするつもりはないのだけれど、僕がなぜこのような書き方をしたかを説明させてもらうと、レイデオロは普段すごく気分良さそうに体を使う馬で、皐月賞やホープフルSの時はすごく伸びやかでいい走りをしていた。実際に当時の追い切り診断では推奨馬として取り上げているんだよね。その頃に比べると脚捌きのスムーズさがイマイチに映ったので、ダービーでは推奨できなかったんだ。
動きが硬く見えた原因として考えられるのは、あまりにも完璧に仕上がっていて筋肉が硬くなっていたということ。人間の筋トレでも同じだと思うけど、馬も調教を積めば積むほど筋肉は硬くなってゆく。ダービーのレイデオロは、結果的に素晴らしいパフォーマンスを発揮したように、動きが硬く見えるくらいの方が競馬で力を発揮できるタイプなのかもしれない。これは仮説に過ぎないんだけど、僕としてはそのように考えている。見方によっては「キビキビしたいい動き」と捉えた人もいるかもしれないからね。
長年この世界にいて、今も毎日のように馬に乗っているんだけど、未だに馬という生き物を100%理解しているとはなかなか思えない。むしろ馬に教えられてばかりだ。極端な話をすれば、一括りに「馬」と言っても1頭1頭みんな違う生き物だからね。それでも自分が乗り方を工夫して悪いクセが直ったり、状態が改善したりということもあるから、そういう成功体験が楽しくてやっているんだけどね。
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