2017年10月30日月曜日

【天皇賞・秋回顧】キタサンブラック×武豊騎手の独壇場/1頭だけ”別の競馬”ができたワケ

それでは、天皇賞・秋の回顧をしていこうか。

キタサンブラックは、とにかく豊(武豊騎手)の手綱さばきにシビレたね。出遅れ以外のほとんどすべてが完ペキだった。細かく分析すると複雑だから、レース前から丁寧に見ていこう。まず、スタートはご存知の通りあまりよろしくなかった。ゲート内で前扉にぶつかってしまって、後ろにヨロケた時にスタートが切られてしまったからね。でも、豊とキタサンブラックに慌てた素振りは微塵もなくて、最初のコーナーまでには無理せず中団インに取り付いている。このあたりの落ち着いたリカバリーは、他の騎手にはなかなか真似できるものじゃない。

全体を通して最も重要なポイントは、キタサンが他の馬とは別のリズムでレースを進めているってこと。言うなれば、1頭だけ別の競馬をやっていたに等しい。3コーナーで早々と先団に取り付けられたのは、他の騎手が馬場を気にして多少抑え気味に走らせているのに、豊だけがマイペースを崩さなかったから。もちろん、この馬が道悪を苦にしないことは彼の頭にはあるし、ラチ沿いが空くのも想定ずみ。その上で他馬のリズムにとらわれず、一番走りやすいペースで走らせたもんだから、映像で見ると「積極的にポジションを上げていっている」ように見えるんだ。でも、直線で伸びを切らさなかったことからも明らかなように、あれは無理にポジションを挽回しに行ったわけではないんだな。

抜群の手応えで直線を向いて、あとは最後の追い比べ。彼自身は「ハナに立つのがちょっと早かった」と言っているけれど、それもほんのコンマ数秒のこと。むしろサトノクラウンを出し抜いて、馬場のいい外に持ち出せているんだから、結果的には良かったかもしれない。もちろん馬自身の強さが根本にあってのものとはいえ、やはり彼の騎乗が光ったレースと言うほかないね。

サトノクラウンは、好位のインでじっくり構えて、悪くないレースが出来ている。道悪適性もかなりのものがあるし、ほぼ100点の競馬だろう。惜しむらくは、やはり勝ち馬が120点の競馬をしたことだね。まあこれはしょうがないんじゃないかな。

レインボーラインは、これも道悪は鬼の部類だね。状態は決して良くないように映ったんだけど、中団のインでそつなく運んで、最後はジワジワと伸びてきている。ま、今回は上2頭が抜けて強かったかな。

リアルスティールマカヒキソウルスターリングなんかも、馬場を考えればよく頑張っていると思う。なかなかこの馬場状態で力関係を推測することは難しいんだけれど、上位に来た馬には一定の評価を与えてもいいんじゃないかという気がする。ただ、10月に入って道悪GIが続いているから、そろそろ良馬場のキレ味勝負がみたいね。


see more info at 元騎手・坂井千明の乗り役流儀~騎手にしかわからないことが、ある。~