それでは先週の重賞回顧をやっていこう。まずはクイーンSから。
アエロリットは、典(横山典騎手)からすればもう“してやったり”だろう。突然の大逃げだったとはいえ、多少気負うところを見せたのは1コーナーだけ。向こう正面ではもう息が入っちゃってるし、そのままいい手応えを保って直線へ。最後は調教みたいに楽な感じで突き抜けてしまった。とにかく中途半端に抑えず気分よくいかせたのが何より良かったんだね。
このメンバー相手にこれだけやれれば大したものだけど、ある意味次は厳しいレースになる可能性も否定できない。というのも、大逃げとはいえ決してオーバーペースを刻んだわけではなくて、むしろ番手以下の馬がついてこなかっただけ。言い換えれば、ものすごくプレッシャーのない競馬だったとも考えられる。さすがに毎回この作戦を取るわけにはいかないから、どこかで我慢を覚えさせる必要があるし、そうなればもっとキツい競馬になることは避けられない。もちろん馬に相当な力があることは証明されたから、秋以降が楽しみであることは間違いないんだけどね。
トーセンビクトリーは、道中の立ち回りや最後の伸びは良かったけど、ちょっと他の馬に迷惑をかけてしまったね。僕が思うに、あれは見た目よりも複雑な問題で、色々な要因がからんで発生したように見える。まず、直接の原因はヤマカツグレースが直線で止まったこと。だけど、普通に弱い馬が手応え一杯になって止まるだけなら、祐一(福永騎手)もあそこまで大きなアクションで避けることはなかった。問題の本質は、ヤマカツグレースがまずまずの手応えで直線を向いたにも関わらず、直線で急に下がってしまったことなんだ。
祐一はうまい騎手だから、常に周囲のことはしっかり見えている。当然ながら前の馬の手応えを確認しながら乗っているわけだ。彼がヤマカツの後ろを直線までキープしていたのは、「まだ前が頑張ってくれるはず」という目算があってのこと。トーセンにも多分直線で伸びる感触があっただろうから、ギリギリまでヤマカツの後ろに待機して、いいタイミングで外に出すという想定をしていたと思う。ところがヤマカツが意外なほどアッサリ止まってしまい、それに反してトーセンはグイグイ伸びている最中だったから、一気に前との差が詰まって、乗り上げそうになったところを横っ飛びする形になったんだろう。まあ騎乗停止はやむなしといったところだろうけど、ちょっと不運なアクシデントではあったね。
クインズミラーグロは、ゲートの出がひと息で後方からの競馬。メンバーが集ったせいで相対的に人気を落としていたけど、ワンパンチ足りない代わりに常に堅実なタイプだから、インでロスなく運べばあのくらいやれても不思議じゃない。ただ、やはり勝ち切るとなると何らかの展開の助けは必要だろうな。
アドマイヤリードは、終始外々を回らされたのが響いたね。おまけに、トビの大きさを考えればやはり広いコースでこそのタイプ。今回の結果はあまり気にする必要はないと思うよ。
マキシマムドパリは、どうしてあんなに後ろから行ったのががわからない。前走のレースぶりを見れば前々で運んだ方がいいのは明らかなのに…。愛知杯を後方一気で制しているとはいえ、それほどスパッとキレる馬でもないし、後方待機で末脚不発でもとくに驚けないな。まあそういう意味では、アドマイヤと同じで参考外の一戦だろう。
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