最後に、ジャパンCの回顧だね。
ショウナンパンドラは、いつもよりも前、前回(天皇賞・秋4着)と全く同じ外枠からでも、中団あたりに付けて早めの競馬をしていたね。その前回は位置取りが後ろ過ぎたうえに、直線でもかなり外へ持ち出すロスが響いてもコンマ2秒しか負けなかった。いくら不利な外枠だったにせよ、乗り方ひとつで勝負になっていたはずで、池添はその反省を踏まえて積極的な競馬をしたんだろう。追い切り診断でも触れた通り、調教の動きが良くて、パドックでの気配も抜群。デキの良さを掴んでいたからこそ、自信を持って攻めの競馬に徹することができたんじゃないかな。それでいて、4コーナーでラブリーデイが早めに動いた時にも仕掛けを我慢したのが良かったとはいえ、直線で狭い所を割って抜け出した勝負根性も大したものだよね。東京で結果を出してくれたけど、一瞬の決め手が生きるという点では、直線の短いコースの方がより向いている。急坂はあるものの、中山の方がより持ち味が生きるはずで、距離が延びても苦にしないタイプ、有馬記念に向かったとしても、また期待できるんじゃないかな。
ラストインパクトは、道中でインを通っていたうえに、直線でもそのまま最内を突くコース取り。最後は少しでも馬場のいい外へ持ち出したくなるものだけど、ムーアは徹底してインを狙っていた感じだね。9レース、10レースでも最内を突いて勝っていたから、多少馬場が荒れていたとはいえ、内を突いた方が有利だと思ったんだろう。2400mピッタリを回って来たのはこの馬とジャングルクルーズぐらいで、距離ロスが一切なかったように、最高にうまい競馬ができていたと思うよ。まぁ、道中で走りに遊びがあれば切れる脚を使えるし、元々これぐらいは走れて不思議のない馬。またムーアが乗るようなら、有馬記念でも侮れないだろうね。
ラブリーデイは、最内枠だったぶん、1コーナーで外から他馬にドッと来られる形。ただ、ある程度前へ付けず中途半端に下げる形だったら、もっと窮屈な所に押し込まれていただろうし、テンから出していきながらも、すぐに折り合いがついている。道中もスムーズに流れに乗れていたんだけど、仕掛けるタイミングがワンテンポ早かったかな。4コーナーでゴールドシップが外から上がって来た時に一緒に動いたのは、ゴールド(シップ)は簡単にバテないタイプだし、あそこであの馬に離されたら敵わないと川田は思ったからだろう。早めに動いたぶん、最後の最後で苦しくなった感じだけど、勝ちに行く競馬をしていただけに仕方がないんじゃないかな。展開のアヤで力負けではないし、2400mが長いとは思わない。乗り方ひとつで前の2頭を逆転できるはずで、有馬記念で巻き返すチャンスはいくらでもあると思うよ。
ジャングルクルーズは、インコースを通ってロスのない競馬ができていたとはいえ、このメンバーに入ってこれだけやれれば上等でしょう。ジリ脚で決め手に欠ける感じだから、直線が長い東京は合っているんだろうね。これで鋭い脚を使えるようになればGIでもチャンスがあるかもしれないけど、もう6歳だけに、これから大きく変わってくるとは考えづらいから…。血統的に持って生まれたものもあるだろうし、あまり大きな期待をかけるのは酷じゃないかな。
サウンズオブアースは、1コーナーで外から押し込まれた時に馬が怒っていたけど、すぐに落ち着きを取り戻していたし、道中もラブリーデイのすぐ後ろでスムーズに流れに乗れている。自分の競馬に持ち込めても伸び切れなかったんだから、今回のところは完全に力負け。これでもう少しでも決め手がしっかりしていれば、勝負になるんだろうけど…。成績が示す通りで、ワンパンチ足りないということでしょう。
イラプトは、スタートは良かったんだけど、ジックリ構えて好位4~5番手で大事に乗っている感じ。最後までバテてはいない反面、切れる脚は使えなかったね。決め手勝負だと分が悪いし、ハナを切るぐらいの積極的な競馬をした方が良かったんじゃないかな。調教でも力強い走りをしていただけに、むしろダートで良さが出そうなタイプだけど、まだ3歳でこれから変わってくる余地はあると思うし、瞬発力勝負にも対応できるようになるかも。来年もジャパンCに使ってくるようなら、怖い存在になるかもしれないよ。
ミッキークイーンは、中団のインでジックリ構えつつ、3コーナーあたりから徐々に外へ持ち出していたね。秋華賞も早めに外から動いて押し切ったにせよ、同世代の牝馬が相手だから通用したということ。今回は古馬、しかも牡馬の一線級が相手だったから。力の差が出たということだろう。まぁ、長距離輸送があったせいか、当日はマイナス6キロの馬体重。パドックでも腹が巻き上がり気味に見えたし、その辺も少なからず響いたのかもしれないね。
4コーナー手前から内のショウナンパンドラとぶつかっていたとはいえ、ショウナンをマークして、外から押し込めに行っての結果だし、こればかりは仕方がないと思うよ。
ゴールドシップは、3コーナーからマクっていたように、この馬の競馬ができていていたんだけどね。シャドーロール、ブリンカーを外したせいか、道中は気分良く走れていたのに、最後は頭を上げて遊びながら走っていたね。馬への当たりの柔らかさという点で、道中はノリ(横山典騎手)。少々強引でもビッシリ追えるという点で、最後の直線だけウチパク(内田博騎手)が乗れたら最高なんだけどなぁ(笑)。まぁ、今回はスムーズにゲートに入っていたし、五分のスタートを切れたのは大きな収穫。宝塚記念以来を叩いた上積みもあるだろうし、最後まで真面目に走りさえすれば、有馬記念でガラリ一変があるかもしれないよ。
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